ニューヨーク州の最上級裁判所であるニューヨーク州上訴裁判所は、2016年6月、弁護士・依頼者間秘匿特権の放棄の例外である「共通の利益の法理(common interest doctrine)」の適用範囲を訴訟が係属しておらず、かつ予期もされていない状況下における合併等の商取引に拡張した2014年の中間上訴裁判所の決定を覆しました。

Ambac事件判決は、ニューヨーク州における共通の利益の法理が適用される場合について、弁護士・依頼者間のコミュニケーションが第三者に開示された場合であっても、(a) 当該第三者が依頼者と共通の利益を有しており、(b) 当該コミュニケーションが、(i) 共通の法的利益を促進するために、かつ、(ii) 係属している又は合理的に予期される訴訟に関連して秘密とされている場合には、秘匿特権による保護が維持されることを明らかにしました。

上記のとおり、ニューヨーク州では、共通の利益の法理は訴訟に関連する場合に限り適用されることとなります。他方で、他の多くの州及び連邦裁判所は、取引の当事者が共通の法的利益を有する商取引(例えば合併)において、共通の利益の法理をより広範に適用しています。このため、ニューヨーク州を含む多数の法域の法令や法的利益が関係する取引の場合、裁判所がどの法域における共通の利益の法理を適用するか明らかではないため、当事者間のコミュニケーションが開示されるか否かが極めて不明確となります。

企業は、商取引の後に訴訟が開始した場合には、上記のようなコミュニケーションが開示される可能性があることに注意する必要があります。特に、合併契約に関しては、当事者間で弁護士・依頼者間のコミュニケーションを共有することがしばしばありうるため、注意が必要です。本記事は、米国で合併を含む商取引を行う日本企業にとっても、将来起こりうる法的紛争において注意すべき事項として紹介するものです。

詳細は、Jones Day Commentary " New York Reins In "Common Interest" Doctrine-Special Caution Warranted in Negotiating Mergers"(オリジナル(英語)版)をご参照ください。

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