I.  認定失効制度の具体化と再エネ制度の再度の運用変更(飛び地規制の厳格化)

1. 認定失効制度をめぐる現状

既に Japan Renewable Alert 44及びJapan Renewable Alert 47でお伝えしたとおり、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号。以下「 再エネ特措法」という。)の抜本的な見直しを含む「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(2020年6月12日公布、令和2年法律第49号。以下「 改正法」という。)により、FIT認定が期間経過により自動的に失効する「認定失効制度」が導入され、2022年4月1日から施行されることとなりました。

認定失効制度については、2019年11月18日の経済産業省の有識者会議において、1つのあり得る制度として紹介され、2020年2月25日に失効認定制度を盛り込んだ改正法の案が国会での審議に付されましたが、その認定から失効に至るまでの具体的な期間(失効期間)や既存案件に対する取扱いなどは明らかになっていませんでした。そして、こうした具体的な制度の全体像が明らかにならないために、日本の再エネ市場への投資に対する適切なリスク評価に困難を感じた大手邦銀を含む多数の金融機関が再エネ案件への融資を停止するなどの動きが見られていたところです。

2. 認定失効制度の詳細設計についての議論の開始

こうした中、経済産業省は、2020年7月22日の有識者会議において認定失効制度の案を示し、公的な場での同制度の詳細設計についての議論が開始されました。

事務局からは、認定失効制度の詳細設計が決定していないことから、運転開始に向けた準備が一定程度進捗している事業者であっても、「失効期限までに工事が完了し運転開始に至らず、認定が失効してしまうリスクがあるとして、特に既に認定を受けた2MW以上の大規模な太陽光発電について、金融機関から資金調達が行えず工事に着手できない、という声が複数寄せられている」ことに言及した上で、「早期に制度設計の見通しを提示」することで、「資金調達を含めた事業実施準備の進捗を妨げることを回避することは、再エネの導入拡大のためにも重要」との認識が示されました。

その上で、事務局からは、「運転開始に向けた準備が進捗し、確実な運転開始が期待されるもの」として、「2022年4月の改正法施行日までに、開発工事に着手済みであることが公的手続によって確認できた2MW以上の太陽光」が挙げられ、これについて運転開始までの失効リスクを取り除くとの案が示されました。具体的には、改正法施行日までに電気事業法48条1項に規定する工事計画届出が不備なく受理されていることをもって上記の「開発工事に着手済みであることが公的手続によって確認できた」ものとし、これらの案件については失効期間を20年間とすることなどが提案されました。

さらに、事務局からは、このほかの案件に関する失効制度の具体的な詳細設計についても、上記の考え方を踏まえつつ、できる限り早期に議論をするべきであるとの方針が示されました。

3. その他の運用の変更

上記有識者会議では、更にいわゆる飛び地案件(設備設置場所として隣接しない地番を含む案件)に関しても、事務局から運用ルールの見直しについて言及がありました。

Japan Renewable Alert 45でもご紹介したとおり、太陽光の飛び地案件に関しては、段階的に運用が厳格化されてきたところです。上記有識者会議では、事務局から、遠く離れた飛び地を追加した上で太陽光パネルの大半を当該飛び地に設置するような変更は「制度の趣旨を逸脱」するものとの説明がされ、同日、ウェブサイト上で公表している「変更内容ごとの変更手続の整理表」「再生可能エネルギー発電事業計画における再生可能エネルギー発電設備の設置場所について」の2つの文書が改定され、同日をもって運用が再び厳格化されました。

具体的には、再エネ特措法施行規則(平成24年経済産業省令第46号)5条2号の2において、調達期間終了までの間、発電設備の設置場所が同一の場所であることが要求されていることが指摘された上で、設置場所の地番の追加又は削除をする変更認定申請については、公的収用や災害により土地が利用できなくなった場合などを除いては、(1)「隣接する一連の地番」の追加又は削除、(2)「当初地番と同一の場所と見なせる距離にある飛び地(太陽電池の大半が当初認定された地番に設置されている場合に限る。)」の追加又は削除に限って認めることとされました。上記のうち括弧内の「太陽電池の大半が当初認定された地番に設置されている場合に限る。」以外の部分については太陽光案件に限らないようにも読めるところ、もともと飛び地であることが当然の前提である風力などの案件において、どのように適用されるかは不明瞭です。この点については、弊所でも関係各所への確認を行っているところですが、未だ明確な回答が得られておらず、引き続き確認・協議等が必要と考えられます。

上記各文書では、インパクトの大きな変更が頻繁にされており、今後も留意が必要です。

4. 今後に向けて

上記有識者会議における認定失効制度の議論の内容は、弊所を含む多くの関係者の声を受けて示されたものであり、詳細設計についての議論の第一歩です。ただ、現時点ではいまだ十分に詳細設計の内容が示されたとはいえない上、認定失効制度以外にも、上記の飛び地規制のほか、FIP制度、解体等費用の積立などの改正法に関する諸点についても、検討されるべき課題は山積みです。

世界的な脱炭素化の潮流の中で意欲的に開発に取り組む事業者やそれを資金面から支える投資家にとって、制度の安定性や合理性は重要な要素ですが、再エネ法制は変革期にあり、多くの法令改正や運用変更が行われています。ほとんどの論点が、太陽光に限らず全再エネ電源に影響し得るものですので、太陽光、風力等の電源種を問わず、事業者や投資家は、各種制度変更の内容を正確に把握するとともに、国に対して、こうした規制が開発や金融の実態を踏まえた合理的なものとなるようその声を効果的に届けていくことが求められています。

II.  世界の風力市場で影響力ある 100人の弁護士( AWAW)に弊所弁護士 4人が選出

若林美奈子を含む弊所弁護士(外国法弁護士を含む。)4名が、A Word About Wind(AWAW)の 2020 Legal Power List(グローバルな風力業界において影響力がある企業内及び法律事務所の弁護士100人を2年ごとに選出するもの)に選出されました。弊所からは、ロンドン・オフィスのEvan Stergoulis及びRavinder Sandhu、ヒューストン・オフィスのGiji John、そして東京オフィスの若林美奈子が選ばれ、弊所が、欧州、アジア、米国にわたって再エネ法務をリードしていることが示されました。

なお、弁護士の選出は、業界からのインプット及びAWAWの調査チームの独自調査並びに風力及び金融の各業界からの専門家審査員らによる助言に基づくものです。

Originally published July.29.2020

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